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新・元自衛官の憂い  ようこそ、時事&軍事雑学BLOGへ!
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  • :05/05/06:01

09070800 ~言うは易く行うは難し~

新聞に『陸自機材更新へ 3自衛隊、相互通信可能に』という記事が目に止まりました。

記事の内容は割愛しますが、海・空とシステムが異なる陸自の通信機器の更新に乗り出すという内容です。

反響は無いと思いますが、私などは2006年に陸海空自衛隊の統合運用のため統合幕僚監部が設置されたのですが、これまでの7年間は何をしていたのかと問いただしたくなります。

自衛隊もこの程度ですから、政府もお粗末君状態なのは言うまでもありません。






新防衛計画の大綱に、北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するため「策源地攻撃能力」、中国の尖閣諸島領土問題から「自衛隊に海兵隊機能付与」などが検討されていると聞き及んでいますが、はっきり言って無理です。

気持ちはわからないわけではありません。相手が拳銃を突きつけているのですから、撃たれる前に撃ちたいのはよくわかります。日常生活では、正当防衛が成立する場合も考えられ、〝それならばやらないと損する〟で国防に採り入れようというほど簡単なことではありません。

国防問題では成算・勝算の有無が精査され、日本流にアレンジして実行されます。〝やらないと損〟でやれるものではありませんし、やっていいものではありません。

憲法と戦後の平和な時代で完全に平和ボケとなった政府ならではの発想です。国際環境下で国防問題を考えなければならないのですが、憲法に固執し国内問題で論じる習慣になってしまっているのです。

ベランダでプランターを使って野菜を育てるのと、畑で野菜を育てるほどの違いがあるのですが、日本政府はこれを同じレベルで論じているという醜い論争を繰り返しています。経済では「ガラパゴス化」などと言われますが、日本では国防問題も完全にガラパゴス化が進んでいるのです。

「策源地攻撃」は、北朝鮮が相手でなくともまず不可能というのが常識です。さらに、北朝鮮は何でも地下に埋めたがる国です。軍事基地や施設、軍需工場まで地下に埋めてしまい国ですから、ミサイルのサイロなど埋めてしまうのはたやすいことでしょう。

地上配備型でもTEL(Transporter Erector Launcher 輸送起立発射機)の搭載され移動を繰り返し、いつどこから発射されるかわかったものではありません。当然、TELだけでなく列車に偽装しているものも存在するでしょうし、策源地攻撃能力が無駄とは言いませんが、期待されるほどのものではありません。

もしかしたら、北朝鮮のミサイル発射ショーを見て、〝あれならやれる!〟などと思ったのかもしれませんが、あれは米国のケネディ宇宙センターか日本の種子島宇宙センターの貧乏版で、実戦では全く使用されることなどありませんし、あそこを叩いたからと言ってミサイル攻撃が無くなるわけではありません。

自衛隊の高級幹部が堂々と発言できる時代になったのは歓迎しますが、そうした反面、元高級幹部というだけで巷では無意味に迎合しますが、高級幹部の資質については誰も疑いを持ちませんので、「何でも言ってしまえ!」で放言を繰り返す輩もいることを理解して欲しいです。

自衛隊の高級幹部といえども、自衛隊では専門職で経験を重ねており、高級幹部だから何でも知っているわけではないのです。偵察衛星など、ここ数年に導入されたもので、軍事オタクでもない限り衛星についてお勉強することはないでしょう。

策源地攻撃ついて、とある元高級幹部は「米国の偵察衛星を使えば可能」などと言っていますが、偵察衛星は写真解像度を上げるため、近地点百数十キロ、遠地点二百数十キロの低軌道で、1日1回から数回の決まった時間に決まった地点上空に現れ写真撮影します。

1度目の撮影でTELが確認されても、次に衛星が上空に現れるまでにミサイルが発射されたり移動していることは確実で、攻撃隊(ミサイルなど)が向かったところもぬけの殻となります。

そこでグローバルホークの採用と相成りますが、地下サイロや列車にカモフラージュされていれば、いかに先端のセンサーでも感知するのは難しいのは当然です。

でも、グローバルホークを朝鮮半島に使うか尖閣諸島に使うかはわかりませんが、朝鮮半島の監視となれば朝鮮半島上空に進出しなければならず、韓国の同意が必要となり、北朝鮮上空に進出するようなことになれば領空侵犯となり、果たしてそれを北朝鮮は看過するかという問題も出てきます。

さらに、TELの発射態勢下にあるのが確認できたとしても、それがどこに向けられるものかわかりません。

策源地攻撃がいかに無意味かおわかりいただけたでしょうか。

尖閣諸島奪還のため海兵隊機能を持たせるのは勇ましい話ですが、一部では尖閣では「海自の圧勝」などと嬉しいことを書き立てるメディアも存在しますが、中国人民解放軍は総兵力(現役)2,285,000人、予備役510,000人、準軍事組織660,000人と推定されており、対する自衛隊の総兵力は約240,000人ですから、10:1の戦いとなります。

唯一の救いは、中国は防衛正面が多面的で日本だけに軍事力を指向するわけにはいかないということだけです。通常のまともな国家であれば、集団的自衛権や同盟関係を結び、中国が日本に軍事力を指向させても他の地域から圧力をかけてもらえる可能性もありますが、現在の日本の有り様ではそれすらも期待できません。

離島の攻撃には制空権がカギとなり、尖閣諸島方面に航空戦力の集中が必須となります、手っ取り早いのは航空母艦などの機動部隊となりますが、「空母を持たない」というお国柄ですから、海兵隊機能を持たせる前に航空戦力の整備が必要になります。

尖閣諸島正面となる中国南京軍区には、16の航空基地、戦闘機9個連隊(約320機)、攻撃機3個連隊、爆撃機2個連隊が配備されているとされています。ちなみに、中国人民解放軍空軍だけで戦闘機総数は約1,300機とされており、空自ではF-15.F-2、F-4合計で約360機ですから、尖閣争奪戦となった場合、本当に日本に勝算があるのか疑問です。

そこで米軍への期待となりますが、現状では集団的自衛権についていまだに論争されている国ですから、集団的自衛権の解釈等を変えない限り、「我々(日本)は、あなた方(米軍)を守れませんが、命を張って我々(日本)を守ってください」となるわけですから、米軍(米国)は日本を護る気になっていただけるでしょうか。

米国が日本に無人島を護るために、経済・財政の上で関係の深い中国と正面切って米国は戦争に踏み込んでくれるのか。日米安保条約では、日本に対する武力攻撃があった場合、日米両国は「憲法上の規定及び手続きに従った」対処するとされており、米国は議会の宣戦布告を参戦の条件とすることも可能であり、日米防衛協力のガイドラインでは自衛隊は防空・着上陸侵攻の阻止、排除などを主体的に実施するとされており、一義的には自衛隊の責任という解釈もできます。ですから、米国(米軍)の介入までに相当の時間がかかることも予想されます。

このように、問題は山積しているのですが、「策源地攻撃」「海兵隊能力付与」など暢気に論じている場合ではないのです。

戦争において必要な知識は極めて簡略であるが、この知識を実行に移すことは本当に容易ではない.
クラウッゼヴィッツ

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