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新・元自衛官の憂い  ようこそ、時事&軍事雑学BLOGへ!
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  • :03/13/16:03

03202123 1995年3月20日

1995年3月20日地下鉄サリン事件が起きました。



昨今、地下鉄サリン事件の〝風化〟が関係者の間から危惧する声が上がっていますが、私は地下鉄サリン事件を風化させることは日本人の責任放棄だと思います。

この事件は、首都圏の「民間人を標的とした世界初の化学兵器〝テロ〟」であり、事件を起こしたのが敵対する国家ではなく、カルト宗教団体という特異さからも風化などさせられるものではありません。

日本人はとかく国家という概念に嫌悪感を露わにしますが、私たちが安寧な生活を送る場所こそ国家であり、国家転覆を企んだ宗教団体が、いまだに存在することは本当に許されるのでしょうか。


元自衛官から見た地下鉄サリン事件のお話をします。

事件は3月18日に遡ります。

この日は土曜日で、本来であれば休みでした。
大宮駐屯地にある陸上自衛隊化学学校では、翌日に行われる教育の準備が慌しく行われていました。

19日陸自朝霞駐屯地で行われる教育に、防護マスクと戦闘用防護衣を400着を警察に貸し出すというものでした。学校幹部は、神経剤サリンの教育を命じました。

今でこそ、対ゲリラ・コマンド等の対処訓練を警察・自衛隊共同で行ったりしていますが、当時は警察と自衛隊が交流、協力はあり得ないものです。これは、戦後日本の暗黙の了解事項だったのです。

オウム真理教は、この暗黙の了解を取り消すにたる集団、国家に危機を及ぼす集団だったのです。

朝霞では警察官(機動隊員)に防護マスクの装着法、戦闘用防護衣の着方、サリンの検知方法などが教育されました。


当時、化学学校の隷下にあった101化学防護隊(現、中央即応集団隷下「中央特殊武器防護隊」)は防衛庁長官直轄部隊でした。総勢約150名。化学兵器防護のプロ集団でした。

地下鉄サリン事件では、分析器で当初「アセトニトリル」が検知され、そちらに注目が集まりましたが、アセトニトリルはサリン製造過程もしくはサリンを薄めるために使われたものでした。

101化学防護隊はいち早く非常呼集をかけ、当時の青島幸男都知事の災害派遣要請前に動き出しました。派遣幕僚といった形式で6名が市ヶ谷に移動。移動中にサリンを無害化する「除染」の打ち合わせを行ったと伝えられています。

市ヶ谷に到着すると、駐屯する第32普通科連隊は現場に人員を送るべく準備がなされていたそうです。

第32普通科連隊長は訓示で、「現場の指揮はその場で最高階級のものが執れ」と命じました。

通常、第32普通科連隊で編成される場合、現場指揮官は2尉もしくは3尉の小隊長級ですが、「派遣幕僚」として向かった101防護隊のスタッフは三佐級で、当然、幕僚が現場指揮を執るという異例中の異例の事態となりました。

しかし、これは第32普通科連隊長福山隆1佐の大英断です。化学兵器が使用された現場で、その知識のある者が指揮を執るのは至極当然のことでした。

福山1佐は、派遣幕僚であった化学学校スタッフに、こう言ったそうです。
「隊員たちは、あんたらの言うことを確実にやります。きちっとやらせます。ただ、お願いだ。隊員を殺さないでくれ」

本来であればアドバイスしかできない派遣幕僚に指揮権を与え、現場の指揮を執らせることを認めた英断は感動しますが、さらに驚くのはこうした指揮命令系統をいかに現場を優先させるためとはいえ、自衛隊ではもっとも忌み嫌う行為です。これを行えた福山1佐こそ、有能な指揮官であったといえます。

個人的には、複雑なものがあります。

自衛隊はとかく誤解を受け、旧軍と同じ存在として日本国民から忌み嫌われ続けてきました。現在でこそ、こうしたものは薄らいできているようですが、その嫌われようは警察官の比ではありませんでした。自衛官は結婚したいと、お付き合いしている女性の家庭に行こうものなら、「自衛隊と結婚させるわけにはいかない」と相手にされないなどあちこちで起きていました。

化学学校のスタッフは、あの「731部隊」と同じだといわれ続け、「悪魔の部隊」「毒ガス戦を想定した部隊だから、真っ先に攻撃される」など中傷され続けてきました。注目されることを嫌い、研究・訓練を積み重ねてきましたが、地下鉄サリン事件で中傷してきた国民を守ろうと立ち上がったのです。

彼らの活躍は、別の機会を設けたいと思います。

繰り返しになりますが、国家転覆、私たち国民に禍をもたらそうとした集団が現在でも存在し、その首謀者が存在していていいのでしょうか。

オウム真理教が引き起こした事件に対する私たちの反応は、日本人の良識を問われるものではないでしょうか。今一度、考えるべきではないでしょうか。

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